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初めて、異性に興味を持った 恋とか愛とかではなく。 もっともっと知りたいと、貪欲に思っていた。 10 微笑 次に目を覚ました時には、キャラメル色の髪の毛が陽に照らされて、 眩しいくらいに輝いて見えた。 「ダークさん、そろそろ用意した方がよくないですか?」 そう言ったサチをぼーっと見つめて時計を見ると、 10時30分前だった。 ガタンと勢いよく立ったせいで椅子が派手に後ろへ跳んだ。 自分の部屋に戻って、いそいそと準備をする。 朝がめっぽう弱い俺の朝は、いつもこうだ。 素晴らしい位、無駄のない動きで準備を整えると、サチは目をまんまるにして それからおかしそうに笑った。 ずっと無表情だったサチがほんの少しだけど笑ったのだ。 「寝癖。一カ所だけぴょんってなってますよ」 そう言って俺の髪にそっと触れるとふわりといい匂いがした。 これで大丈夫です。と言ったサチは、やっぱり女なんだと思った。 男から発せられない、女らしい良いにおいに俺は少し照れた。 「じゃ、行くか。」 「はい。連れていって下さい。」 そう言って、一番隊専用道場へと、サチを連れて行く。 サチは周りをきょろきょろとすることもなく、俺の後に黙ってついてくるだけだった。 「・・・・サチは朝が強いんだな」 ぼやっとだったけれど、今朝のことを思い出す。 開け放たれたサチの部屋に、寝ぼけていても驚いたのだ。 外に出た時、まだ陽はそんなに高くなかった。 「そうですか?」 歩くと10分弱かかるその距離にした会話はそれだけだった。 朝礼が終わると、サチのことがシアン指揮官から紹介され、 みんなの目は鳩に豆鉄砲をくらったみたいだった。 それもそうだろう。 女の騎士なんて、前代未聞もいいとこだ。 非難めいた目を向けるみんなにシアンがさらりと国王も認めていらっしゃるのだから、 馬鹿な真似はしないように。と一応釘をさしていた。 一番隊は良く言えば個性が強い、強者ぞろいなのだが、 悪く言えばプライドが高く、融通が少し効かない。 何かの時はどの隊よりも一致団結するのは間違いないのだが、 日頃の馬鹿らしさといえば、群を抜いている。 隊長の俺にでもタメで口をきいてくるのも、一番隊だけだ。 皆歳も近いし、実力に雲泥の差があるわけでもなく、 友達みたいだから仕方のないことだと思うが、 一方で俺が甘いんだろうなと思うこともある。 「納得いかねーよ、ダーク。」 昨日誰かが言ってた台詞だと俺は少し呆れ気味に思った。 弓に関しては右に出るものはいない、アイビーが眉間に皺を寄せて聞いて来る。 (無理も・・・ないよな) サチが俺ら並にいかつい体つきをしていればまた話は別なのだろうけれど、 いかついどころか、もっと飯食えよ。と言いたくなるような 線の細さは女の中でも弱々しく見える。 「俺は納得してるよ」 昨日、痛い程、納得させられた。 「でも、俺は納得いかねぇ」 詰め寄ってくるアイビーに、サチが名案とばかりに手を叩いた。 その目は・・・・何と言うかすごくキラキラしている。 「じゃあ、勝負しましょう」 頂点を目指す闘う物ならそうなように、 サチは強いであろう者を目の前にして、じっとしていられない質らしい。 俺も昨日はそうだった、とサチと手合わせする前のことを思い出す。 「話、わかってんじゃん、お前」 にっと笑ったアイビーは狐目を細めた。 隣接している弓道場に移動して、アイビーとサチが並ぶ。 きちんと防具をしているアイビーに対して、サチは先ほどと何も変わらない出で立ちだ。 「お前、それでいいのか?怪我するぜ」 「結構よ」 弓矢三本勝負の先攻はアイビーだった。 右に出る者はいないと自他共に認める弓の名手はきっちりと 真ん中に三本納めた。 サチの弓を取る姿勢は、教科書みたいに正しかった。 真っ直ぐに見つめる先に的がある。 シュっと空気を裂く音に、矢が綺麗に的に当たった。 しかもど真ん中。 騎士たちがざわつく。 まぐれにしては、綺麗すぎた。 「へぇ、やるじゃん」 その後の2本もサチは真ん中に当てる。 これはさすがに、皆ど肝を抜かれる結果になった。 俺はあんまり弓矢が得意ではないから、 サチの恐ろしいまでの集中力に驚く。 「すごいですね・・・・彼女」 そう呟いたのは、射的の名手、レグホーンだった。 彼も例に漏れず、サチにこてんぱんにされることとなるのだけれど。 その後、流鏑馬、射的、空手、柔道、剣道、 暗号解き、パズルゲーム、じゃんけん、謎かけ・・・と 陽が少し傾くまで皆挑んでいったが、互角もしくはその上をサチはいっていた。 最期には、口を挟む者等いなくなる程に。 「お前、すごいな」 「そうですか?」 なんとでもないように言ったサチは昨日よりもいきいきしていた。 楽しかった。なんて言うもんだから、隊員は皆、開いた口が塞がらない様だった。 自惚れ野郎ばかりの一番隊が、一人の少女にけっちょんけちょんに やられている様子を俺は焦り半分、面白半分で見ていた。 (いい機会になったな) 俺もだけれど、隊員以外で競争することのない一番隊は焦りを知らない。 それでなくても向上心の強い奴らばかりだから、きっと良い刺激になっただろう。 「俺もぬけぬけとしてられんな」 そう言って、道場に引き返そうとした時だった。 「や。ごきげんよう」 にこやかに現れたのはビートだった。 「何か用か?」 ビートはたまに、用がなくてもここにくる。 「今日はね、サチ嬢に用事があるんだよ」 そう言ったビートの手には数冊の辞書と やさしい文字の練習と書かれた、7歳くらいの時に学んだ 懐かしい教科書ドリルを持っていた。 「おい、サチ」 伸びをしていたサチが振り返る。 キャラメル色の髪の毛がふわりと揺れた。 「はい」 「やぁ、サチさん」 「ビートさん。」 サチの表情の変化は微々たるもので、感情の変化を読み取りづらい。 今も、驚いているのか、何とも思っていないのか、わからなかった。 「これから語学の勉強をしてもらおうと思うのだけれど、いいかな?」 「語学ですか?」 「サチさんの話すはしばしはわかるんだけどね、ちょっとこの国とは違うみたいなんだ」 イントネーションとか。というビートに俺はうんうんと頷く。 たまに知らない単語を話すサチの言葉は意味がわからない。 「・・・そうなんですか」 そう言って手渡されたドリルをパラパラとめくると 「全然わかんないな」 と小声で呟いた。 「手の空いた時でいいから、ドリルをやってみるといいよ」 そうしたら、もっと話すのが楽しくなると思うよ。 読み書きもできれば本も読める。とビートは一所懸命に説明していた。 まぁ、確かに、コミュニケーションを取る上で言葉は大切だ。 「ありがとうございます」 そう言ってはにかんだサチの本当の凄さを見せつけられたのは 翌日のことだった。 BACK * NEXT |