誰もが平和を願うのに、
平和な日々はそう長く続かない。

誰もが自由を願うのに、
手に入れた瞬間、不自由を感じる。

矛盾してるのに、人は平和と自由を
求めずにはいられない

02 お伽噺


昔、ばあちゃんからよく聞かされた話がある。

この国は、千年に一度、災いが訪れる。
天からは槍が降り注ぎ、
大地は乾き、
草木は燃え、
人々は、涙の海を作るだろう。


それが、戦争だっていうことを知ったのはつい最近で、
それまでは、何て恐ろしいことを神様はするんだと思っていた。

歴史上、約千年に一度、平和と愛情の国アルバロス大国が
何の因果か、大戦争に巻き込まれる。
その後は、ばあちゃんの言ってた通りだった。

でも、ばあちゃんの話には続きがあった。

でもね。
一万年に一度、奇跡の子が現れる。
その子の慈悲にみちた深い愛が、この国、
いいやこの世界を救うんだよ。


愛なんて言葉を、その当時はすごく恥ずかしく思っていたけれど、
ばあちゃんの優しい口調が、心地よかった。

よく覚えておくんだよ。
その、特徴はね・・・・


今でもはっきり覚えている。
何十回と聞かされた、お伽噺のようなその奇跡の子。
男か女かはわからないけれど、
必ず現れると言っていた。

昔から伝わるその話を、
興味半分で俺とビートはいつも聞いていた。

今や次期国王と言われているビートも
自分の代でその災いが来ることを知っていた。
知っていても、漠然としていて何もできないと、
この間、苦しげな顔をして言っていた。

もし、その災いが訪れても、大事なものを守れるように
鍛えたことで入れた一番隊の名誉も、
親友の悩みを解決するには至らなかった。

ちょうど、この国が設立してから一万年。
九つの戦争にあいながらも、細々と生きながらえた国だ。
3大陸の一番大きいこの国が、
他所の国から妬まれてること位、誰でも知っている。
豊かで、平和で、穏やかで、
様々な花が咲き誇るこの国を、
貧困と飢餓に苦しむ隣国がよく思うわけがない。

作物が育たない土地と
雨の振らない気候はどうすることもできなかった。
物資の提供をしているけれど、
自給自足で成り立って、裕福なこの国は、
彼等の目にどう映っているのだろう。

民の流出を恐れた国王たちが、
アルバロス大国への移民を禁じ、重罪を制したことから
歯車がすこしずつ、狂ってきていた。

厳重に警備しているものの、
広い大地には必ず節穴がある。
そこから脱国して来るものも居れば、
戦争をけしかける者も居た。

後者の者たちのために俺らがいるけれど、
一番隊なんて、殆ど外に出て何かをすることはない。
三月に一度の試験以外、鍛える以外することは殆どないのだ。


「どしたんだい?ダーク」

王宮の庭園の芝生で寝転がっていた俺の顔の上に
幼馴染みのビートの顔があった。

「一万年か・・・・と思って」

「一万年?あぁ、クレア婆ちゃんの話?」

あれ、本当なのかな。と言って笑うビートの顔は疲れているように見えた。
毎日毎日、政治のことだの、何だのって頭ばっかり使ってるから、
目の下にクマまで出来て、やつれているようにも見える。
小さい頃はチャンバラごっことかして、この芝の上でよく遊んだのに。

陽色の髪の毛が、白すぎる肌に似合わないな、と思った。
少し焼けたくらいの肌のビートの方が、
この陽色の髪が羨ましい位に似合ってた。

「どうだろうな。」

そもそも戦争なんて起こるのだろうかとさえ思う。
今日だって、昨日と何も変わらない。

優しい風が花を撫でて、抜けるように青い空に雲が浮かんでいる。
浮かんでいる・・・・が・・・・


「なぁ、アレなんだ?」

「何?」

「ほら、あそこ。雲の所に黒い点が・・」

「あれ?何だろ。何か・・・・落ちてきてない?」

「隕石?」

「まさか」

俺が指差した黒い物体はどんどんと大きくなってきていた。

「まさか・・・・な」

はは。と笑ってビートを見ると、恐ろしいものでも見た時のように
顔が真っ青になっていた。

「だ・・・ダークあれって、人じゃない?」

「え!?」


もう一度見ると、遠目からでも人だとわかった。


「ちょ・・・早く、受け取りに行って!」

「え!?受け取る!?」

無理な話だろ。と思いながらも、二人で落下地点だろう場所まで走る。

「あ、危なっ・・・」

あと少しという所で、落下する速度が遅くなった。
空から降ってきたとは思えない程ゆっくり、
静かに、黒い人は綿毛の草地に横たわっていた。

「・・・何だ?」

「わからない。今、何が起きたの?」

「・・・・・さぁ」


ゆっくり近づいていくと、黒かったのは服だけで、
見たこともない衣装に身を包んだ、小さい女だった。

息を確かめるとすうすうと気持ちの良さそうな寝息を立てていただけで
これといって外傷もなかった。

「息してる?」

「あぁ・・・・でもこの女・・・」

血の匂いがした。
あの独特の、できれば嗅ぎたくない濃い匂いが。

顔をしかめていると、ビートに肩を叩かれる。

「ねぇ、ダーク。これ・・・・」

ビートがめくった左腕に、鮮やかな紋様があった。



奇跡の子はね、
左腕に、息をのむ程美しい、
それはそれは鮮やかな模様があるんだよ







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